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リア・ノーヴァスチ、ネイサンのインタビュー

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ネイサン・チェン:エルトン・ジョンは特別で、彼になるという目標はなかった

エレーナ・ヴァイツェホフスカヤ

シングルの世界選手権2度のチャンピオン、ネイサン・チェンは、リア・ノーヴァスチの独占インタビューで、4回転アクセルについて話してくれ、イェール大学での勉強とコーチなしの練習がどこか似ていること、エルトン・ジョンになろうとしない理由を説明してくれました。

跳ぶ予定のルッツと予定のないアクセル

卓越したアメリカのスケーターとのインタビューについて、チェンがラスベガスのグランプリシリーズ第1戦にやって来るよりもずっと前に、私たちは事前に取り決めていました。大会前に話す予定でしたが予定通りにはいきませんでした。公式練習の空き時間、彼はコーチのラファエル・アルトゥニアンと一緒に、市のリンクの一つで過ごしていました。一般開放のリンクで自分のプログラムの個々の部分を滑り込み、それによって、あたかもなぜ彼が勝つのかという質問に周到に答えているかのようでした。

- 一年前あなたはリア・ノーヴァスチのインタビューで、自分のキャリアのある段階で、あなたの能力を超えていた4回転ルッツと4回転フリップをマスターすることをほとんどあきらめたと打ち明けました。今あなたは全5種類の4回転ジャンプをフリープログラムで成功させることができる世界で最初の選手という栄冠を手にしていますが、ラスベガスであなたはフリープログラムに4回転ルッツを入れませんでした。なぜですか?

- 体の状態がまだルッツを跳ぶほど良くなかったので。たとえ試合でトウループとのコンビネーションにすることはできなくてもショートプログラムにはルッツを入れています。フリーに入れていない理由はシンプルです。ルッツトウ(3+3)のコンビネーションはジャンプ要素の中の一番最初に入れていて、もし4回転にして跳んでもプログラムを最後まで滑り切れないなら面白くはないですよね?

- 一年前あなたはすでに何か同じようなことを言っていましたね。つまり、4回転ループを完璧に入れるのに何の問題もないけれど、すでに5つの4回転が入ったプログラムにジャンプを加えるのとはまったく違うということですね。

- その通りです。技術的な点では僕はある程度完璧主義者です。氷上で要素が100%仕上がったと感じない間は、冒険的な決断は何もしません。

- ではもう一つ、世間をかなりひどく騒がせるジャンプの質問です。4回転アクセル。あなたの口からは、いつかこの要素を入れるつもりだという話は聞いていません。あなたのコーチによれば、あなたはこのジャンプの練習をすでに始めているということでした。どちらを信じたら良いですか?あなたが4回転アクセルをマスターする史上初のシングル選手になるという考えはあなたのプライドを刺激しますか?

- もちろんそのことについては考えています。一方では、スポーツにやっていないが少なくとも試すことができることがあることを知るのはすばらしい感覚です。しかし、4回転アクセルは最終目的ではありません。そして、それは間違いなく僕が今焦点を合わせている課題ではありません。しばらくは入れているジャンプの質を良くするためにしなければならないとても多くの練習をするつもりです。技術をクリーンにして安定性を高める。大部分を一人で練習しなければならないのに、これを全て実現するのはそんなに簡単な事ではありません。でもがんばっています。

どの試合も試験と同じ

- グランプリシリーズ第1戦の試合前、あなたはたとえ数日間であってもカリフォルニアのラファエル・アルトゥニアンの所に練習に行くことを計画していましたが、大学で試験を受ける必要があったため実現しませんでした。ラスベガスで10月はもう少し時間があると言っていました。これは一緒に練習する時間ができるということですか?

- 時間のことですが、ただ10月に1週間自由な時間ができるということを言っただけです。1週間です。この時間でラスベガスの試合に出ることができました。今月の残りの期間はまた勉強でとても忙しくなります。その点で、10月の初めは特に過酷でした。日本で最初の試合(Japan Open - 編集者)が、ちょうど大学の僕にとって十分難しい中間試験の期間とぶつかったので。宿題に多くの時間がかかりました。全てするためにたいていは教師の助けが必要でした。どの課題も6~12時間はかかり、時々授業のあと、頭には一つの考えだけが残っていました。"きっとやってみせる!"

- 大学で1、2年学び、選んだ職業が、全く残りの人生を捧げたいものではなかったという結論に達することはよくあります。この点であなたはどうですか?イェールを選び、そのために、価値のある練習に完全に集中する可能性をある程度犠牲にしていますが、期待外れではありませんでしたか?

- 正直に言うと、勉強は予想していたよりずっと大変でした。たぶんこんな生活を選んだことは間違っていたけど、僕はただこう考えたんです。競技を辞めた後、成功した未来を持ちたいなら、まずは良い教育を受けなければならないと。フィギュアスケートは長い間できますが、一生続けることはできません。まさにこのために僕は今、やらなければならないことをやっています。これは大変です。これは絶え間ない挑戦、絶え間ないストレスです。そして勉強が僕にとって簡単とは言えません。時々、練習で起こるのとそっくり同じように、自制や強制せざるを得ません。僕は毎日多くの新しい問題に突き当たっていますし、それをどう解決したらいいのかいつもわかっていると言ったら嘘になります。でも僕は自分のためにこういう選択をし、全部乗り切ろうととてもがんばっています。

- 間違っているかもしれないですが、宇野昌磨選手は自主練習を試してみて、どんなに規律正しく、自立していたとしても、時々アスリートは一人ではない、側にヒントをくれ、サポートしてくれ、あれこれアドバイスしてくれる人がいるということを感じることがとても大事な時があると言っていたと思います。カリフォルニアから離れてニューヘイブンに行っている間、あなたにもそんな考えが生まれましたか?

- もちろん。ラファエル(アルトゥニアン)は僕にとって単なるコーチではありません。彼と彼のチームのみんなは僕の人生、僕のキャリア、僕が達成したこと全ての大部分に関係しています。練習に行き、フェンス越しにコーチがいないということは、僕にとって、最初はあきらめてしまいたくなるほど慣れないことでした。他方から見ると、子どもの頃からラファはある意味で僕に自主性を教えていました。練習や、試合や、僕がやっていることへの態度で。彼と僕の母は僕に最も大きな影響を与えていて、彼らのおかげで僕はスケーターとして形作られました。だから、今僕は親しい人たちが側にいないことで責任をさらに感じてさえいます。

- その責任というのはモチベーションやポジティブな要因になっていますか?それとも単にその感情をただ受け入れ、それと共に生きることを学ぶ必要がありましたか?

- うーん…良い質問ですね…。僕はやはりモチベーションになると言いたいです。ある練習で何かうまくいかないときでも、心の奥では僕はすでに何かをし、何かを達成したということがわかっています。つまり、再び全てのことを少なくとも繰り返すことができ、それからそのレベルを離れ、より高いステップにのぼることを試すことができるということです。どんなスポーツも、本格的にするなら、どういう風に日々良くなっていくかの歴史です。この点で自分の結果に対する責任は明確に僕のモチベーションになります。部分的に、これは僕の試験への準備方法と比較できます。シーズンの一番最初から、僕には決まった数の試合があることはわかっていました。Japan Open、それからスケートアメリカ、グランプリフランス大会、そしてできればファイナル。この中のどの試合でも僕はある目標を達成しなければならないという自覚は、モチベーションを維持するだけでなく、正しく作成された練習のおかげでエネルギーを与えてくれさえします。

- オリンピックの前に休学するという考えは実現しそうですか?それとも許可されない可能性もあるんでしょうか?

- そんなことは起こらないよう本当に願っています。僕はスーパーバイザーや学部長と自分のスポーツのプランについてすでに議論しています。彼らはオリンピックが近くなったら、僕は十分に休暇をとり、ある時ラファエルと練習するためにカリフォルニアに帰ることができると考えています。そしてオリンピックの後また勉強に戻ることができると。

一般リンクでの孤独

- 気持ちが沈む時というのはあるものですが、あなたはどう切り抜けるかをご存知ではありませんか?

- その状態は時々みんなに起こることで、おそらくコーチと練習しているか一人で練習しているかはまったく関係ないでしょう。もし僕がとても寂しいと感じたら、FaceTimeでラファに電話し、自分の練習の動画を彼に送ります。つまり、僕たちはいつも連絡を取っていると言えます。そしてもちろん僕は、あちこちの試合で一緒にいるとき、アルトゥニアンと練習できるどんな機会も使います。

- まさにその理由であなたはラスベガスに来るや否や、一般開放されている市のリンクに行ったんですか?

- はい。僕たちは初心者よりもっと高いレベルのスケーターが滑っているリンクに行くつもりでしたが、実際は、リンクにはフィギュアだけではなくホッケーをするかなり多くの子供たちがいました。いくつかの慣れないことがあり、それに加えて見つけることができたリンクは、ホッケーのNHLのものより小さいことがわかりました。カリフォルニアからコネチカットに行った時に僕が練習をしたリンクも一般向けで、氷には多くの人がいました。そこはオリンピック用の広さだったという違いがあるだけです。ずっと小さな子供たちの間を縫って滑らなければならないというのは、初めは僕がソルトレイクシティでフィギュアスケートを始めたばかりの頃のことを絶えず思い出させました。個別リンクでの練習はカリフォルニアのラファのエリートグループに入ったあとにやっとできましたが、僕はどんな条件でも練習することができます。これは本当にそんなに大きな問題ではないです。

- すでに終わった2試合のうちどちらの演技により満足していますか?

- 日本ではフリープログラムしか滑っていません。最後のトリプルアクセルが抜けてしまい4回転トウループの後のフリップが1回転になってしまいました。ラスベガスで行われたグランプリ大会は僕にとって事実上シーズン最初の本格的な試合になりました。こちらもミスなしで終えることはできませんでしたが、(フリープログラムでチェンは後半の4回転トウループが2回転になりました - 編集者)合計点には満足しています。改善できることが多くあることはわかっていますが、もし最初の試合をある基準点として考えるなら、全て満足しています。

他方から見ると、Japan Openでの演技はより質の良いものだったという感覚があります。おそらく、日本の観客のみなさんは、いつもとても強くプロセスに引き込まれ、とても積極的に反応してくれるからです。これはスケーターがたちまちプログラムに没頭する助けになります。はっきりとエネルギーが充満しているのを感じました。特にステップの時に。

- おそらくですが、ラスベガスでそのステップを始めた時、明らかに音楽に何かが起こりましたね。あなたがアクティブに動けば動くほど音が小さくなった印象でした。

- 僕自身は気付かなかったんですが、全く同じことを演技の後にナージャとヴェーラ(ナジェージュダ・カナエワとヴェーラ・アルトゥニヤン - 編集者)に言われました。そういうことはないはずです。オリジナルバージョンでは、逆にプログラムのこの部分で曲がさらにパワーアップします。おそらくあまりにも激しすぎると考えて誰かが単に音を小さくしたんでしょう。

ネイサンにとってのヒップホップ

- 新しい振り付けを覚え、あんな風に威勢よく4本の4回転をプログラムに入れるのはどれくらい大変でしたか?

- ヒップホップそのものにはずっと興味があったので、以前は氷上で決してそんな事をやってみようと思わなかったんですが、このアイデアに喜んで飛びつきました。マリー=フランス(デュブレイユ)のチームには、デュブレイユ/ローゾンのグループにいるダンサーたちのために多くの追加の振り付けをしてくれている、本当にクールなヒップホップダンサーのサム・シュイナードがいます。僕はラッキーでした。サムは僕がマリー=フランスの所にフリープログラムを作りに行った時にモントリオールにちょうどいて、僕の振り付けを見てくれる時間を見つけてくれました。プログラムの終わりにやっていることは全部丸ごと彼が作り上げたものです。

フィギュアスケートでヒップホップを解釈して試したプログラムで成功したものはそれほど多いわけではないので、最初は少し懐疑的でしたが、サムは、"演技の最後の30秒についての話なら何のリスクがあるっていいうんだい?"と、全く素晴らしい主張をしました。おまけにこれは偶然見つけたラップ曲の断片みたいなものではなく、全て同じ楽曲、"Bennie and the Jets"のものです。楽しいものになると思います。日本での演技の後、マリー=フランスは、この曲を僕に提案したのはある程度冒険だったとすでに打ち明けています。

- なぜですか?

- 当初これはダンサーのために選んだものだったからです。でも、マリー=フランスとパトリス(ローゾン)の所で練習している生徒の中にはこの曲が似合う人が誰もいませんでした。そこに僕が現れ、全てのことが原則に従って起こりました。あ!ほらネイサン。このプログラムは彼にぴったり!元々アイデアは素晴らしかった。全ての曲がエルトン・ジョンの伝記映画、"ロケットマン"のもので、この曲は実際今とてもポピュラーですし、僕が去年滑っていたプログラムとはかなり違っていて、そこに自分にとって大事な長所を見出しました。僕たちは毎年曲やスタイルやその他の全てのことで実験しようと頑張っていて、正直に言うと僕はこのプロセスが好きなんです。もちろん、シーズン中に振り付けを整理し、それが観客のみなさんがプログラムをより良く感じてくれる助けになるよう願っています。日本での最初の試合でさえ、観客のみなさんはとても良い反応をしてくれましたけどね。

- 心の中で自分がエルトン・ジョンだと感じることにはもう成功していますか?

- それが可能とは思いませんし、そういう目標はありませんでした。誰かがエルトン・ジョンのようになれるとは思いません。彼はあまりにも特別です。でも、曲についての話をするなら、パフォーマーにはいつもその人なりに曲を解釈する権利があります。"ロケットマン"の映画を見れば、映画の製作者たちが、それほど音楽データを解釈することを目的としていないことに気付くのは簡単です。映画では単に曲が流れているだけです。つまり、どの曲もそれぞれが聞こえるように自由に解釈できるということです。マリー=フランスはこの問題を見事に扱っていると思います。

- 新しいプログラムのアイデアを検討する時、ある程度ではあっても潜在する観客に目標を置いていますか?

- もちろん。ファンのみなさんの好みや音楽のトレンドの傾向を特別研究しているとは言えませんが、フィギュアスケートは人的要因がとても大きな意味を持っているスポーツです。観客のみなさんがプログラムにどう反応するかは、ジャッジが演技をどう評価するかに確実に影響しています。だから僕の答えは"Yes"です。僕は計画に同意する前に、本当にこれら全てのことをよく考えました。スケーターの中には自分のプログラムにヒップホップの断片を入れようとする人がいることは知っていました。つまり、それを試しても、正確にはヒップホップの特別な演技者にはなれません。同時にトップの6人の中にはヒップホップを選ぶ人はいないだろうとほぼ確信していました。

もう一つ些細なことがあります。この20~30秒はプログラムの最後で会場を引き込みますが、ヒップホップは演技を支配している部分ではありません。全てのバランスがとても良いです。少なくとも僕はそう思っています。

- フリープログラムの衣装は自分で選んだんですか?

- 母が作りました。その上いわゆるギリギリになって全て準備しました。僕たちは織物店に寄り、シャツの生地のサンプルの中の一つを見て、すぐにそれが気に入りました。"かっこいい!" 実際は、これは最終バージョンの衣装ではありません。僕たちはどういう物にするか検討を続け、シーズン中に決めます。同じことが左手の手袋にも言えます。

- 次のグランプリまでにプログラムに何か変更を加える予定はありますか?

- そのために使えるほど多くの時間がありません。ラスベガスとグルノーブルの試合の間はたった2週間しかありません。ラスベガスからコネチカットへの移動時間と回復の時間を考慮すると、僕が実際に練習できる時間はだいたい5日くらいです。だから時間は本当に少ないです。今、主な課題はできるだけ早く、回復し、試合で許してしまったミスを修正し、最大限にプログラムを滑り切れるようにすることです。それから何か変えるための時間が残っているかどうか考えてみます。


スケアメ終わってネイサンのインタビューが色々出てますが、どれも答えがすばらしくて感動してしまいます。

こんなに忙しいのにあんな演技ができるとは…すごい努力ですよね。

ますます応援したくなりました😊