ただのフィギュアスケートファンのロシア語翻訳

フィギュアスケート関連のロシア語記事や動画の翻訳が中心のブログです。

ラファのインタビュー、トゥルソワの移籍、ネイサンのことなど

russian.rt.com


≪常に前進しているアスリートたちはいます≫:アルトゥニアン、トゥルソワのポテンシャルとトゥトベリーゼからプルシェンコへの彼女の移籍について

エレーナ・ヴァイツェホフスカヤ

世界ジュニア2度のチャンピオンで、シニアのグランプリファイナルのメダリスト、アレクサンドラ・トゥルソワは、大変モチベーションの高いスケーターです。このような意見をRTのインタビューでコーチのラファエル・アルトゥニヤンが述べました。彼はこういう人たちと練習するのは簡単ではないと言っています。なぜなら彼らは常にとても野心的な目標を立てるからです。2度の世界チャンピオン、ネイサン・チェンの指導者は、さらに、なぜ外国人の専門家たちにとって、グループにロシア人を入れることが大きなリスクなのかを説明し、アスリートたちの移籍を裏切り行為だと考えることをきっぱりと断り、パンデミックの状況下で、どのように自分の生徒たちと練習を行っているのかを話しました。

 

- アレクサンドラ・トゥルソワがエテリ・トゥトベリーゼのグループから去る決定が明らかになった時、あなたは、ロシアのスケーターたちは、彼らのために作られた環境に激しく依存していて、彼らがどんな方向に向かっても脱走とみなされているとおっしゃいました。何のことを考えていたのか説明してください。

- 全てのロシアの選手たち(これはトゥルソワについてだけの話ではありません)が、自分だけで成長したのではないことを、ただ理解する必要があるだけです。ロシアでは移籍や脱退はどんなものであっても、とても痛ましく受け取られているくらい、努力、お金、決まった組織と人々が関わっています。外国のコーチたちは、このことを必ずしも理解しているわけではないように思えます。彼らは、彼らの所にロシアから選手がやって来たら、その選手を迎えて、他のスケーターたちとしているのと全く同じように練習を続けることができると考えています。私は長年アメリカに住んでいて、アメリカのコーチと考えられているとはいえ、この特殊性をとても良く理解しています。ロシア人スケーターたちの移籍はどんなものであっても、まず、前コーチたち、さらに国のスケート連盟の幹部と、徹底的に話をつけていなければならないと考えています。

- つまり、単純に前の生活から離れて新しい生活を始めるわけにはいかないということですか?

- これはただ非現実的なだけです。選手がずっと自分にかかる費用を自分で払っていて、自分のコーチを選び、同時にトレーニングの過程で関係していたことがある他の専門家たちを自分の一存で雇っていたけれど、突然全てを変えることにし、変えた。つまり、新しい人たちを自分のお金で雇った、というような状況ではありません。ロシアではこういうことはできません。多くのことが未だにソビエト時代にインプットされた原理と概念に基づいています。ロシアの選手たちが自分で全ての費用を払い始めたら、彼らもやりたいことをし始めますよね?とはいえ、エテリ・トゥトベリーゼは、自分の生徒たちの脱退に対して、もう以前ほど辛辣な反応をしていないように私には思えました。

- 議論の余地がある主張ですね。グループの振付師の一人が、最近インタビューを受け、トゥルソワのエフゲニー・プルシェンコへの移籍を、背中へのナイフの一撃と同じ裏切り行為だと言っていました。そしてこう言いました。≪裏切った人間は私たちにとって存在しないのと同じだ。≫

- これについては全く理解できません。それなら、彼女の前の指導者、アレクサンドル・ヴォルコフからトゥトベリーゼのところへ移った時に、トゥルソワが裏切り行為を行ったと言ったコーチが誰もいなかったのはなぜでしょう?他の専門家たちのところからグループにやって来た全ての人は、決して裏切り者にはならないのに、出ていく時にはそうなる、ということですか?それは面白いですね。私の見解ではそういうことはあってはいけません。選手を自分のところに受け入れたら、あなたのために選手を育ててきた人に感謝してください。あなたの所から出て行く時には幸運を祈ってください。

- ロシアではある才能ある女子シングル選手がコーチから離れるや否や、予想される指導者として、すぐにあなたの名前が囁かれ始めます。トゥルソワの移籍の話には関わりましたか?

- 私はこういった話にほとんどいつも関わっています。選手たちは、ロシアの選手たちも含めて、かなり頻繁に相談しています。しかし、私が既に言ったこと全てをよく考えると、深く関わりたくないので、すぐにいくつかの申し出から一生懸命逃れようとしています。スケーターと練習を始める時、全てのことに興味があります。その子がどこでどの様に育ったのか、何を達成しようと努力しているのか、どんなトレーニングが習慣になっているのか。しかし、外国人のスケーターの場合は、私はこの点について十分に良く理解していますが、ロシアの選手やそのご両親と常に練習する方法については、あまり良く想像できません。なぜなら彼らは、私自身がロシアに住んでいた時にやっていたように、朝から晩までかかりきりになってくれるコーチたちのグループがある無料のリンクが提供されるという違う条件で育ったからです。今、私はネイサン・チェンと対等な立場で仕事をしています。彼と私はパートナーと言った方が良いです。

- しかし、もし私が間違っていなければ、このスケーターの家族とかなり深刻に対立していた時期がありましたよね。

- ありました。おまけに、変な話ですが、私はいつもネイサンの母親の立場をよく理解していました。彼女はその頃、息子が本物のスケーターになるように、とても多くの力を注いでいました。西側には選手たちの集中養成は存在しません。その代わりに、何か別の方法で埋め合わせることになります。誰かがその代わりになっています。ネイサンの場合は母親で、ミシェル・クワンの場合は父親でした。だから、たとえ私がコーチとして気に入らないやり方を取っていたとしても、チェンのお母さんは子供の訓練に対する自分の見解を持っているということに、いつも敬意を表して接するように努力していました。時が来て、チェンのお母さん自身が私にこう言いました。≪他の誰もできないことを彼のためにしてくれた。≫

- 全てコーチが我慢するということですか?

- そう言うこともできます。私はいくつかのことに耐え抜いただけで、今は大人で成年の若者が、一語も聞き漏らさないように私の言うことを聞いてくれ、私の全ての要求を果たしてくれています。しかし、これは盲目的な服従ではなく、お互いへの信頼と尊敬が全く異なるといったレベルでの関係です。

- チェンはイェール大学の休学問題を解決できましたか?

- はい、彼は文字通り最近、最終試験に合格し、こう言いました。≪これで勉強は終わり。今は練習に完全にフォーカスを当てることができます。≫ ネイサンは既にカリフォルニアに戻り、部屋を借りてトレーニングに取り掛かりました。今私は、リンクが再開した時に、彼と私が個別リンクを使えるように合意を得ようとしているところです。

私たちはそれなしでも良い条件で練習しています。リンクにいるのは5、6人です。しかし、アメリカでface to faceと言うように、個別に練習する機会を持ちたいこともあります。チェンをエリートスケーターに変えるために、何か本格的により良いことをしたいんです。

- オリンピックを除いた全ての最高のタイトルを獲得した人なのに、興味深い話ですね…。

- あなたの皮肉はわかりますが、多くの細部はより完全なものにすることができますし、あらゆる面で伸ばすことができます。少し前に、このテーマについてネイサンと話し、私は正直に彼のスケートの多くのことが好きではないと言いました。

- どんなリアクションでしたか?

- 彼はこう答えました。≪僕もです。≫ それで、私たちは多くのことをする計画を立てています。いくつかのダンススクールに行き、新しいプログラムを試し、いくつかの新しい要素を考え出し、全体の難しさを高める。私たちはここ2回の世界選手権のネイサンの全ての演技を最後までよく見て、2回目の方が1回目より弱くなっているという結論に達しました。とにかく勝ちはしましたが。

- トゥルソワの話に戻りたいと思いますが、難しさに対する並外れた欲求の点で、彼女は私にあなたの生徒を強く思い出させます。彼女がエフゲニー・プルシェンコの所に移籍した後、すぐに何人かの専門家たちが、4種類の異なる4回転ジャンプを持っているにもかかわらず、サーシャには膨大な量のマイナス点があるという意見を述べました。不十分なスケーティング、スピンのテクニック…。

- シニアのグランプリファイナルでトゥルソワが何位だったか思い出させてもらえますか?

- 3位です。

- つまり私は正しく理解しているということですね。私たちは今、彼女はグランプリファイナルで3位になったけれど、その後、彼女がコーチを変えることにしたら、突然全てが不十分になったという話をしているんですよね?

- スケーターがプログラムにあんな数のクワドを入れたら(これはネイサン・チェンのことではありませんが)、プログラムはジャンプからジャンプへのスケートになることは認めて下さい。振付にジャンプを詰め込み過ぎると、他のことをする時間が本当に残っていないと、あなた自身が再三おっしゃっているんですから。

- それはそうですが、論理的に考えましょう。ある価値のシステムを作り出し、それに対して答えた。選手は全ての要求を満たし、3位になった。でも今私たちは、どういうわけかその選手の滑りが間違っていると話し始めているんでしょうか?それなら、現行システムの変更を実現させて下さい。しかし、選手が要求されたルールに従って演技したことについて非難し始める人がいるのを、私は理解できません。

- もしあなたがトゥルソワの現コーチの立場だったとしたら、5つの4回転ジャンプをフリープログラムにどう入れ続けるかを考え始めますか?それとも、プログラムをより簡単にした方が彼女のためになると説得しようとされますか?

- 実際、もしサーシャがプログラムに5本ではなく3本の4回転を残したとしても、女子にとっては既に多い本数です。まして、全ての女子選手が年齢と共にジャンプすることが少なくなるんですから。こんな本数の4回転を維持するのは、サーシャにとってとても大変なことになると私は100%確信しています。だから、素晴らしいジャンプを跳ぶことができる人であっても、スケートや、技術、スケーティング、スピン、同じくジャンプ力学の改良に取り組む必要があります。毎日これらに取り組まなければ、スキルはあっという間になくなり始めるでしょう。ネイサンだって、アクセル以外の全ての4回転を跳ぶことができますが、毎日これらに取り組んでいますよ。

- トゥルソワがシリーズ大会両方で優勝して出場したグランプリファイナルで3位になり、それからロシア選手権で主要大会に選ばれた時、トゥトベリーゼグループの女子選手の一人の母親が私にこう言いました。≪サーシャは巨大な心理的ハードルを乗り越えることができました。そして(彼女のおかげですが)彼女のコーチたちも。彼女はとてもやりたかったからという理由だけで、自分自身で率先して4回転ジャンプを始めた最初の子です。残りの子はみんな、4回転を跳ぶのを長い間ずっと禁止されていました。コーチたちが怪我を恐れていましたから。トゥルソワが、まだ子供の頃に最初の4回転を跳び始め、そしてそれからやっと、彼女の後を追って残りの子も試すようになりました。≫

- モチベーションが一役買ったんですね。サーシャ自身にそれ程のモチベーションがあったのか、彼女のご両親にあったのかはわかりませんが、彼女は5本の4回転をプログラムに入れたがり、それをやった。基本的に、かつてネイサンも全く同じように行動しました。やりたいからやる!まあ、お母さんもそれを望んでいました。私は全く正当な理由のないリスクをどうにかして抑えようとしていたとはいえ、進歩は進歩であり仕方がないことだとわかっていました。全てを慎重に考慮できなければならないという別の問題はあります。私たちのスポーツで、戦術を捨てている人は誰もいません。サッカーのように。サッカーでは様々なポジションでみんながあれこれプレーすることができ、みんなが良く走り回っていますが、その際全ての人がフォワードに出るわけではありません。

もしトゥルソワやネイサンが、かつてアスリートとしてより専門的だったとしたなら、おそらく彼らはいくつかの状況で、今日はジャンプ2本にして明日は3本にする、というような戦術に従うことに同意したでしょう。しかし、彼らは二人共、振り返ることなく前進する、非常にモチベーションが高いアスリートです。そういったことは何もしません。つまり、コーチは側にいて全力でサポートするしかありません。

- あなたの見解では、トゥルソワのテクニックで、彼女はこの先ジャンプの計画をどれくらい伸ばせると思われますか?

- 彼女はなかなか良いテクニックを持っていますよ。全てが本当に素晴らしいとは言いませんが、サーシャは全く正常にジャンプしています。彼女と練習することができるということがわかります。彼女自身が自分にとても要求の多い人で、モチベーションがあり、たくさんジャンプしたがっている。これはコーチにとってはとても豊かな土壌です。

- プロのアスリートとして、私は別のことも理解しています。もし≪クリスタル≫の女子選手が、主要大会の公式トレーニングで、40分間に50本のジャンプを跳ぶとしたら、普段の練習で彼らはさらに多く跳んでいて、筋肉の記憶は、それほど集中的に跳んでいない人よりもかなり強く鍛え上げられています。このような場合、成長に応じて選手を教え直すのも、技術的欠点のようなものを直すだけでさえ、信じられないくらい難しくなります。

- その通りです。簡単な統計を引用しましょう。1回のトレーニングで100本のジャンプを跳ぶということは、1日に200本、週に1,200本、月に約5,000本、年に50,000本かそれ以上のジャンプを跳ぶことと同じです。そして、これらの女子選手たちはみんな、こういう日課で既に約5、6年滑っています。その後そういう選手があなたの所へやって来て、一緒に練習を始めたら、全方面からこう言われ始めますよ。あらまあ、彼女はもうあなたの所で半年も滑っているのに何も変わっていないじゃない。

皆さん、半年間でできるのは、象徴的に言えば、何かを描きたいと思うキャンバスにようやく下塗りをすることくらいです。ですから、自分のアスリートに少なくともいくつかの変化が見え始めるまでに、2年必要だと言っていますが、私はこの数字を単純に言っているのではありません。2年間は、新しい筋肉の記憶を築くためだけに使われます。そして、それからやっと、新しいテクニックのようなものや安定性の話を始めることができます。

- エフゲニア・メドベージェワと練習しているブライアン・オーサーは偉業を成し遂げているということになりますか?

- もちろんです。彼は彼女のトレーニングをすることに同意した時、既に偉業を成し遂げました。これはオーサーだけができることで、彼には余裕があったんだと思います。

- あなたは、私たちが今話しているリスクを彼があらかじめ理解していたとしたら、提案を避けたとお考えですか?

- そのことについて答えることは全くできません。

- コロナウイルスのパンデミックの状況下で、今あなたのお仕事はどんな状況ですか?

- 私たちの所に隔離はありませんから、チェンは問題なくダラスからロサンゼルスに戻りました。往復のフライト料金は現在50ドルで、だいたい3時間のフライトです。公園やビーチでトレーニングしています。これも禁止されていません。1日に2回トレーニングをしています。午前中はストレッチ、それからフィジカルトレーニング、ハードな専門的訓練です。ネイサンはジャンプし、私は遠くでこれを観察し、修正しています。マライア・ベルとも同じように練習しています。残りの生徒たちは妻のヴェーラとナジェージュダ・カナエワが見ています。

- 氷上ではなく固い地面の上で大量のジャンプを跳ぶのは、足には相当に危険なことだと何度も聞きました。

- その通りです。私の知る限り、ハイジャンパーでさえ週に2回しか跳んでいません。残りの時間は筋肉を鍛えています。ネイサンがオリンピックの2年前に怪我をした時、全て治った後でさえ、とても長い間氷に出ることが許されませんでした。私たちはその時、ジャンプを始める前に、肉体を丈夫にし、よりたくましくなるために、とても多くの練習をしました。そして、この練習全てを完遂するとすぐに、チェンは大きな苦労もなく4回転ルッツと4回転フリップを身に付けました。今も、私たちはとても気を付けてジャンプしていますし、やるのは私がトレーニングに立ち会っている時、つまり厳重な監督下にある時だけです。残りの日は、ネイサンはフィジカルトレーニングをし、筋肉の強化を続けています。

- 氷上でのトレーニングの再開に関して、何らかの見通しはもうおありですか?

- 近いうちに、専門的にスポーツをする人のためのリンクを開け、3、4人をリンクに入れることを計画しています。現在の対策は、実際私には保険の更新のように思えます。フィギュアスケートはホッケーではありません。特に気を配れば何の接触もありません。一般開放のリンクはより難しく、再開はずっと後になるでしょう。

- パンデミックに関連したご自分の生徒さんたちの心理的な状態に不安はないですか?

- 一般的にはっきりしていない状態には少し不安にさせられますが、心配はしていません。どこにも行かず、何もしなくていいということがわかっているこの状況は、選手にもコーチにもとても魅力的でリラックスさせてくれます。裏返して言えば、私は45年間の仕事にどれだけ疲れていたのかを、全ての出来事が始まったばかりの頃に、突然自覚しました。ネイサンが大学で試験を受けている間ずっと、私は家で寝転んでこう考えていました。何もしないことがこんなに素晴らしいことだったなんて。こんなにクールなこととは思ってもみなかった!