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ミハイル・コリャダ≪演技中は外向的でなければ≫

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≪演技中は外向的でなければ≫ ミハイル・コリャダ - 自身の変化、オリンピックプログラム、ジャーナリストとのコミュニケーションについて

アナスタシア・パーニナ

12月9日

 

彼はなぜトータルコントロールが必要なのかを説明した。

 

このインタビューには長い経緯があります。ミーシャと私たちはソチのグランプリシリーズ大会に彼が出発する前に既に少し話していました。つまり、話をした時には、私たちは彼が(中止された)グランプリファイナルに進出することも、そしてソチから戻ってすぐに昨年のプログラムに戻すことも知ることはできませんでした。≪ホワイト・クロウ≫は、このプログラムをオリンピックシーズンに残してくれるように、どこへでも、サンタクロースにまで請願書を書く準備ができていたくらい、全世界がとても惚れ込んだプログラムです。

インタビューのチェックの段階で、私はミーシャに中止になったグランプリファイナルについての質問に答えてくれるように頼みました。そして、もちろん、私たちは≪ホワイト・クロウ≫に変更になった≪シンドラーのリスト≫についての文章も残しています。これらの質問への答えは、今読むと多くの発言が矛盾しているかもしれませんが、私たちのインタビューをより真実味のあるものにしています。また、これらの答えはコリャダを人として、さらにはアーティストとしてより理解する助けになります。彼はとても繊細な人です。

ミハイル・コリャダとはどんな人なのか?信じられないくらい面白い話し相手ですが、とても閉鎖的な人です。彼は、大事なことであるスポーツに完全に集中できるように、意識的に自分の人生を大きく変え、全ての外部のことをほとんど諦めたと打ち明けています。

社会は驚くほど整っています:そこでは公に自分の罪を認めることがいつも本当の気持ちや考えより大事です。もし、コリャダがうまくいかなかった演技の後、報道陣の前に出て、ひざまずき、国の期待に応えられなかったことに対して泣きながら許しを請うというシナリオを想定するなら、私たちの大多数は心の奥底にある寛容さを見つけ出すことでしょう。そして、もちろん許し、どんなにミハイルが優れているかを話すでしょう。では、公に自分の罪を認めたり、心の内を明かすことができなかったり、そうしたくない人たちがいることを想像してみてください。そういう人たちの心の中には、個人的な義務感や責任感という無慈悲な裁判官がいます。その厳しさを私たちは想像することさえできません。まさにそういう理由で、心の中の裁判官から無罪判決を獲得することはできません。

私たちが普段男子シングルのクオリティーを評価する時に使う定規でコリャダのフィギュアスケートの才能を測ろうとするのは間違っています。なぜならその定規は完全に個性を考慮していないからです。コリャダは、血管が裂けたまま汚れた制服を着て、曲や振り付けのことを忘れてプログラムの終わりまでジャンプをやり遂げる容赦のない空挺隊員ではありません。アレクセイ・ミーシンは、ミーシャがプログラムの音楽のリズムから外れる時、作り上げたイメージを破壊しなければならない時にミスが起こる可能性があるとかつて話していました。

ミハイル・コリャダの強さは、自分のスケートで観客たちを一種の催眠状態に惹き込む能力にあります。それは芸術作品から得られるものです。かつて私はヴルーベリの作品と彼の≪ホワイト・クロウ≫を既に比較していますが、やはりそこにとても多くの類似点を感じています。

コリャダは催眠術を使って滑っているのかもしれません。ロシアにはこれまでこういう優雅な才能を持ったスケーターはいませんでした。しかし、私たちはずっとそういうスケーターが現れるのを夢見ていました。

ミハイル・コリャダから、彼と話す時は敬語を使わないようにと頼まれています。

 

≪ショートプログラムの後に何かを話すのは基本的に変だ≫

 

- 今あなたはチームと一緒に日本にいて、試合前の一定期間の隔離中のはずだったけど、みんな思いがけなかったと思うけどグランプリファイナルは中止になってしまった。これに関してどんな気持ちを持っている?

- 中止になったのはとても残念だよ。最後までファイナルが開催されることを期待していたよ。でも残念だけど僕たちはみんなパンデミックのせいで難しい状況にいる。自分が関心あることについてだけではなく、周囲の健康についても考えないと。

- もしあなたがある種の権力を持っていたら、それを使って全てのミックスゾーンを廃止するんじゃないかと思うんだけど。

- 何て言うか…。それは僕たちの文化に深く浸透しているから、来て、滑って、更衣室へ行くというのがどんなものか想像できないな。

- だけどたまにそういうことが…。

- ショートプログラムの後は基本的に何かを話すのは変だよ。演技が良かったか悪かったかに関係なくね。僕たちには2つのプログラムがあって、フリーで全てが決まる。演技が上手くいかなくて肉体的にも精神的にも状態が良くない時は、まず自分自身で何が起こったのか分析したいよ。

- 初めに全部よく考えて把握した後で話しに出てくる方が楽?

- もちろん。ハードな運動の後に何かを聞かれて、その後さらに文脈から言葉を抜かれたりしたら嫌だよ。だからこそ僕は何も読まないようにしているんだ。

- ここ数年でInstagramアカウントの使い方が根本的に変わったわね。ほとんど全部の写真を隠して、何も新しい投稿をしないし、全体的に外の世界とのどんな交流も最小限にとどめている。このやり方で、きっとたくさん時間ができたんじゃない?

- 時間は確かにたくさんできたよ。何に使っているかと言うと…。練習や家族や自己鍛錬に。シンプルだよ。

- 本を読んだり、映画を見たり、音楽を聴いたりは?

- 全部やってるよ。スマホを使うのは最小限にしようとしてるんだ。

- それは感情の状態に影響があった?今は他人の価値観、他人の関心事、余計な注目はあなたの生活に何の影響も与えられない。心がより穏やかになった?

- そうだね。ずっと落ち着いたよ。今していることをもっと素晴らしくできる。練習に行ってトレーニングしてウォーミングアップして。気が散らされることが何もないから集中するのがより簡単で、自分や状況や一瞬により集中できてるよ。集中することにとても大きな意味があるフィギュアスケートではこれは大事だね。

 

≪アレクセイ・ニコラエヴィチが氷上にいる時、プロセスは彼のトータルコントロールで進む。そして僕はその方が快適≫

 

- アレクセイ・ミーシンは、ユーモアのセンス、賢明さ、そして話が短くても正確に必要な言葉を選ぶ能力があるということで伝説になっている。あなたは彼と2シーズン一緒に練習しているけど、彼は本当にそういう人?

- うん、そういう人だよ。そして僕はそれがとてもありがたいんだ。それと同時に、どんな人にもあるように、彼にも気分の浮き沈みがあって、僕はそれをすぐに感じる。彼の機嫌が悪い時は、より自分や練習に引きこもるようにして、僕自身がすることに集中しているよ。

- アレクセイ・ミーシンのところでのトレーニングはヴァレンティーナ・チェボタリョーワと比べてどれくらい違う?

- 変わったけど、コーチの僕に対するアプローチが変わったんじゃなくて、こういう言い方ができるなら、僕の自分自身に対するアスリートとしてのアプローチが変わったんだと思う。つまり、僕は今完全なアスリートなんだ。(ミーシャはこのフレーズでそれぞれの単語をはっきりと発音しています。)コーチは自分の仕事をし、僕は彼の言うことを聞かなければならない。僕にとってはその方が簡単なんだ。

- 前は違ったの?

- うん、前は違ったよ。

- 詳しく話したくはない?

- その話はいらないと思う。

- あなたはアスリートとしての自分の絶対的な仕事はコーチの話を聞くことだと言っているけど、私は大人のアスリートは時々個人的なコーチを特に必要としないという意見も見たわ。

- 僕にはコーチが必要。これは100パーセント言えることだよ。例えば、アレクセイ・ニコラエヴィチがカナダに行ってしまった時、僕たちは当然タチアナ・ニコラエヴナと練習していたけど、全てが少し違うみたいだった。言葉では表せないけど、アレクセイ・ニコラエヴィチが氷上にいる時、プロセスが彼のトータルコントロールで進んでいると単純に感じて、僕はその方が快適なんだ。

- 練習で、アレクセイ・ニコラエヴィチがジャンプを動画に撮って、それをあなた達が分析しているのを見たわ。これも必要なコントロールの一種?

- うん。ジャンプがどうも間違っていると感じても、動画では全て良いように見える時があったり、逆に全部悪いように見えても正しく跳んだように感じる時がある。動画を見た方が、どこのどの瞬間を直せば良いかを理解するのが簡単なんだ。

- ジャンプは本当に数学や物理学みたい。むしろ形而上学かな。

- 僕にとってジャンプは何か感覚レベルでのことだけど、この感覚にきちんと理解が加わっていないと問題が起こるんだ。

- 今シーズン、あなたは初めて4回転サルコウをコンビネーションで跳んだけど、以前は単独でクリーンに跳ぶことさえ十分に安定していなかったよね。どういう練習をしたの?

- 単純にもっと練習したんだ。徐々にいつも跳べるようになってきているよ。ちなみに、僕たちは4回転ルッツとフリップの練習は残さなかった。ルッツとフリップは単独ジャンプでもコンビネーションでもよく上手く跳べているんだ。

- 細かいことを聞いてごめんなさい。入り、踏み切り、空中姿勢、着氷、具体的には何の練習をしているの?

- 細かいことはたくさんあって、トレーニングでは毎回それらすべてを把握しようとしてるよ。4回転サルコウまでの目印があって、僕たちはそこへ向かう道を踏み固めなきゃならないという感じ。目を閉じていてもどう進めば良いかわかるようにね。僕は自信を持つのに200パーセントが必要な人間だから、どんな時も、昼も夜も、何をするべきかわかっているよ。

- それはあなたの完璧主義が現れているの?

- その通り。

 

≪≪ヌレエフ≫を次の年にやらないことはすぐにわかった≫

 

- あなたは今日≪シンドラーのリスト≫を滑ったけど、私はこの曲を聴く度に泣きたくなり涙がこみ上げて来るの。悲劇で茫然自失になるみたい。あなたは音楽にそこまで没頭することはできない?それともそれくらい強く心を奪われている?

- 最初は慣れるまでそんな瞬間があったよ。感情が高まって、技術的な構成では最後までたどり着けなくて、本当に全てを忘れてしまっていたんだ。曲と感情が一番になっていた。今はバランスを取らなければならないことがわかってるよ。感情を出せるところや絶対に出さなければならないところもあるし、まず技術的な事をするために自分を抑える必要があるところもある。

- つまり、この作品に取り組み始めたばかりの頃はあなたもその感情的なことに戸惑っていたの?

- 僕はそもそもとても感情的な人間で、全てに影響を受けちゃうんだ。だから音楽から受ける感覚とそれを抽象化することのバランスを取るのが本当に難しかったよ。

- ショートプログラムでは≪くるみ割り人形≫以外に≪カルーソー≫を試していたけど、なぜそういう心配をしたの?

- アレクセイ・ニコラエヴィチは僕たちが≪くるみ割り人形を≫作った時、何かが気に入らなかったんだ。僕は全部好きだった。でも彼は何かが足りないと感じていて、僕たちは彼を心配させている原因を探し始めたんだ。探して探して、それから単純に根本的にテーマを変えることにして、タチアナ・ニコラエヴナ(プロコフィエワ)が、テストスケートの1週間前に≪カルーソー≫を提案した。

でも、チェリャビンスクのテストスケートから戻って、やっぱり≪くるみ割り人形≫に戻すことにしたんだ。エイフマン・バレエ団の振付師が、木でできたくるみ割り人形と美しいプリンスの間のイメージの妥協点を見つけるのを助けてくれて、この二面性がプログラムに明るさと完成度を加え、プログラムが≪演技≫を始めたんだ。

- ≪ホワイト・クロウ≫を手放すのは残念じゃなかった?

- シーズンの初めから、このプログラムは来年はやらないし、新しいものを作ると言われていたんだ。アレクセイ・ニコラエヴィチは、自分の生徒が2年間同じプログラムを滑るのが好きじゃないんだ。確かに、生徒の中には古いプログラムに戻す人もいたけど、それは新しいプログラムが合わなかった時や、コーチが単純にそういう決定をした時。だから僕は何か新しいプログラムになるとわかっていて、それに興味があったよ。

- このプログラムに満足できるだけの試合が十分にあった?とても象徴的なプログラムだったわね。

- 十分だったよ。そして僕は先に進まなければならないことがわかっている。人間が何か新しいことをしようとして新しい振り付けを試す時、それはその人を成長させる。アレクセイ・ニコラエヴィチはそれを≪移動キャンバスを取り替える≫と言うんだ。このプログラムには多くのファンがいて、本当に素晴らしかったのはわかっているけど…。

- …けど、いつでも録画で見直せる?

- そう、その通り。

- ≪シンドラー≫はすぐにこれだということになったの?

- うん。ショートプログラムみたいなぶれはなかったよ。衣装もこれで決定になりそう。

- 昨シーズンは、同時期に試合が2つあって、少しオリンピックの団体戦を思い出させた。その時連盟が、これはあなたたちにとっては北京で行われる団体戦の準備大会だと言っていたのを覚えているけど、この経験は本当に2018年の平昌の時と似ている?

- 僕にとっては特に感情の面で同じ大会が2つはないよ。それぞれの出来事が特別で、この言葉は有名無実じゃない。世界国別対抗戦は、確かにオリンピックの団体戦に似ていたよ。でも僕はたぶんこの質問で何を答えて欲しいのかわかっていると思う。僕にはもう何か追加の絶大な責任がかかっているというようなことはないよ。僕は自分がしていることに集中する。僕は一人で氷の上に出る。チームのみんなはフェンスの外で座っている。僕が一人で戦わないと。

日々、自信を感じ快適でいられるように、もしそういう言い方ができるなら、≪錨≫みたいなものを探さなければならない。よく眠れたか、どこの国にいるのか、どんな時間帯にいるのか、どんな人たちに囲まれているのか、いつも、家でトレーニングしている時でさえ多くのことが気になってしまう。人生にはこういう多様性があり予想できないことが起こるもので、僕は毎日、授業を受けるみたいに、何かをそこから学ばないといけない。

でも基本的に試合は練習と同じで何も変わらない。スケート靴は同じだし、衣装は同じだし、氷も。何か上手くいかなくても誰も死なないという観点で調整しているよ。

- オリンピックの団体戦のショートプログラムで上手くいかなかった時、精神的に機関銃で自分を撃ち殺したと話していたのを覚えているわ。撃ち殺されたら、この先滑ることだけじゃなく、ただ生きることも出来ないのだから、あなたの受け取り方がそういう風に変わったのが聞けて嬉しいわ。

- その通り。もし何かが起こったとしても、人生がそれで止まることはない。いつも通り太陽は朝昇り、夜沈む。人生は続く。僕はもっと早くにそれを理解すればよかったけど、遅くてもずっと気付かないよりはましかな。

僕は人生の大半をスポーツに捧げ、何時間も何日も何カ月も何年も氷の上やジムで過ごしてきたけど、それはやっぱり人生の一部に過ぎないことを理解しているよ。

 

≪僕は親切で落ち着いているけど全てに対してではない≫

 

- ギターの演奏の方はどう?

- 今はあまり演奏できていないんだ。たぶん週に1回くらい。でも、座ってギターを持って何か古い曲を思い出しているよ。新しいのは覚えていない。スポーツは遅かれ早かれ終わる時が来るからその時にちゃんと勉強するよ。

- 私はやっぱりスポーツについてだけではなくて、何か他のことも聞いてみたいわ。このことについて話すのはまだ早いとわかっているけど、遠い将来、自分がコーチとして働くことはどれくらい考えている?子供たちと練習するのは好き?

- 好きだよ。でも僕は知らないことがとても多いということを理解している。アスリートの側からは多くのことを知っているけど、コーチの側からはまだもっと勉強しないと。

- 心理学とか教育学とか解剖学とかのこと?

- そうだね。教え方や戦術…。勉強するよ。そして、間違えずに…。まあ、もちろんこの道を間違えずに進めたら素晴らしいけど、間違えることは必ずあるし、それに対する準備も出来ているよ。

- そういう実験をしない?誰に対してどんなテーマでも話せる仮想の演壇があると想像してみて。

- 何かを話さなきゃだめなの?

- だめなんじゃなくてできるってこと。何についてでも良いわよ。猫ちゃん、ファン、親切さ、落ち着き、自分の夢…。

- オーケー。(ミーシャは間を置く。)僕は僕をサポートしてくれている人たちがいることにとても感謝しています。特に全てが希望通り順調に進んでいるわけではない時に、それは想定外のエネルギーを与えてくれます。親切さ、落ち着き…。僕は親切で落ち着いています。でも全てに対してではありません。

あと、僕にはたくさんやりたいことがあります。ちょうどそれをどう実現するかについて考えています。まあ、こんなとこかな。

- 2018年のオリンピックに向けて準備していたミーシャは、2022年のオリンピックに向けて準備しているミーシャとどれくらい大きく違う?

- 別人になったよ。完全に。現実の見方が変わり、別の見方ができるようになった。より良識がある人間になった。(間を置く。)そわそわすることが少なくなった。たぶんちょっと見識が深くなった。

- 何のことで?

- 良いこと。練習のことで。

- あなたは当時、自分は内向的で、高いレベルのアスリートの生活の重要な部分の多く、特に公的な生活が難しいと話していたけど、全ての力と思考を練習に向けるために意識的にとても多くのことを諦めたということ?

- 僕はその方が楽なんだ。僕の大部分は本当に内向的だよ。でも僕の仕事は人前で演技することだから、時々外向的にならなきゃいけない。でも実際にはショートで2分50秒、フリーで4分10秒の演技の時だけだね。

- あなたが必要な時に外向的になるのにはどれくらいのエネルギーを使うの?回復するのに時間がかかる?

- (間を置く。)だいたいいつも長いよ。特にシーズンの終わりは戻すのがとても大変。

- そういう時は何が助けになるの?家族やダーチャや自然かな。いつも効果がある方法みたいなものがある?

- ないか、まだ見つけていないと思う。一番落ち着いた気持ちにしてくれるのは家族だよ。ダーシャと僕はどこにも出かけずに一日中家にいられるし、そうやってそのエネルギーを溜めているよ。