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オリンピック後のラファインタビュー:≪へとへとになって途中で死んでしまうのでは≫

1カ月以上前の内容なので少し情報が古いですが。

russian.rt.com


≪へとへとになって途中で死んでしまうのでは≫:アルトゥニアン、コーチキャリア、昔の残念な出来事、チェンの自信と羽生のアクセルについて

2022年2月10日 エレーナ・ヴァイツェホフスカヤ

 

ネイサン・チェンは、北京でのトレーニングの最後の数日、事実上1つの要素もミスすることがなく、試合の日の朝、フリープログラムを通して一度も休憩することなくクリーンに滑り切りました。このことについて、RTのインタビューで、新しいオリンピックチャンピオンの指導者であるラファエル・アルトゥニアンが話しました。彼によると、≪これはリンクにいた全員を動揺させ始めた≫ということです。彼はシーズンの初めにラスベガスで彼の生徒が負けたことを喜んだのを思い出し、彼が4回転ループを習得した理由を説明しました。彼はまた、アメリカのスケーターに引退して大学で勉強を再開することを勧めたいし、自分は一時的に仕事を離れたいと打ち明けました。

≪これは長い、とても長い旅でした。≫ オリンピックチャンピオンのコーチ、ラファエル・アルトゥニアンは、アメリカのジャーナリストたちの質問に答えながら、このフレーズをミックスゾーンで何度も繰り返していました。そこで、彼の人生のこの勝利の瞬間に、コーチにとって一番重要なことがわかりました。11年前に始まったネイサン・チェンとの旅は、ついに夢に描いていた通り、卓越した絶対的勝利で終わりました。

1時間後、アルトゥニアンと私は一対一で話す機会を得ました。

- この金メダル獲得のためにどんな苦労がありましたか?

- 最後の3カ月は本当に大変でした。こんなに苦しくなるとは予想さえしていませんでした。オリンピックで勝つためにアスリートを調整することは只事ではないと以前から分かっていましたが。

- それついてもっと詳しく話していただけますか?

- オリンピック金メダル獲得のために自分を調整することがどんなものなのか、あなた自身もご存知でしょう。(ヴァイツェホフスカヤさんは飛び込みの金メダリストの方ですね。ミーシン先生の本にも登場しています→その部分の訳アスリートはずっと緊張状態にあり、夢の中でさえ解放されません。私はネイサンがとても緊張しているのがわかったので、いつも簡単に彼とコミュニケーションが取れていたわけではありません。それに、彼の周りにいる人たち:両親、友達、アドバイザー。オリンピックが近付くにつれて、チェンはますます強情になり、より激しく全てのことに反応するようになりました。

しかし、私はあらかじめコーチとして我慢しなければならないこともあると自分に言い聞かせていました。タチアナ・タラソワやアレクセイ・ミーシンのことを思い出しました。旅の最後の時間、トレーニングに関係ないことにコーチは反応する必要はないと、彼らはよく言っていました。この話はとても大変になった時、私をとても助けてくれました。そして、北京では全てが既にかなり軽くなっていました。

- 既に1年前、技術的視点であなたの生徒さんが羽生結弦を含めた全てのライバルたちと比べて頭一つ抜けていることは明らかでした。2本の最も難しい4回転ジャンプ、ルッツとフリップを含めて、ショートプログラムを難しくしなければならなかった理由は何ですか?

- このリスクには理由がありました。

- 今はそう言えますが、シーズンの初め、チェンはアメリカのグランプリシリーズで、このプログラムのヴァリエーションの実現を試し、そこで両方のエレメンツをミスしましたよ。

- ネイサンが私の許可なくルッツとフリップを平昌オリンピックのショートプログラムで跳ぼうとしたことを、4年前あなたにお話ししたことを覚えていらっしゃいますか?
彼はこの内容をトレーニングし、私の論拠のようなものを受け入れるのを断固として拒否していました。その結果、最初のジャンプから転倒しました。発作的にルッツとトウループを入れ替えてプログラムを再編成しましたがそれも転んでしまいました。(入れ替えたのはルッツじゃなくてフリップかな?)そして、その後アクセルにも失敗してしまいました。北京では最大限難しいヴァリエーションを実現する準備ができていました。つまり、状況が変わったのです。

- ラスベガスのショートプログラムの演技の失敗は、ただの有益な時間だったのですか?

- はい。いつだったかネイサンの無敗のシーズンについてあなたとお話ししたのを覚えていらっしゃいますか?今なら打ち明けられます。ネイサンがそのまま敗者にならずにオリンピックに向かうことを私はとても心配していました。こんなことを言ってはいけませんが、今ならおそらく打ち明けても良いでしょう。彼がラスベガスで負けた時、私は喜び、心の中で十字を切りさえしました。なぜならこんな重荷を背負ってオリンピックに行くことはとても大変だからです。恐ろしい事です。

ジャンプの実験のことをお話しするなら、イリア・マリニンとのもう一つのケースを例にしましょう。彼は全米選手権で2位でしたが、北京へは行きませんでした。彼はオリンピックチームに選ばれませんでした。なぜなら彼は何かの大会のショートプログラムで13位になったからです。重要なのは点数ではなく、たった17歳の少年が初めてプログラムで4回転ルッツとトウループを跳ぼうとしたということで、この結果はそんなに気にすることはないと、私は既にその時言っていました。私の観点では、これは難しい内容を滑り切るための完全に当たり前のプロセスでした。そして全米選手権は私が正しかったことを証明してくれました。しかし、オリンピックにイリアは出場しませんでした。

- 質問を言い換えますね。とにかくミスをしてしまうリスクを避けるために、チェンとあなたがショートプログラムを昨年の4回転ジャンプの構成にすることは、より論理的ではなかったのでしょうか?

- 私たちはただ勝つのではなく、君臨したかったからです。そして私は北京でまさにそれが起こったことがとても嬉しいです。

- フリープログラムに6本の4回転ジャンプを入れるのをやめたのも考え抜かれた戦略でしたか?

- はい。シーズンの初め、ネイサンは4回転ループをなかなか上手に跳び始め、演技の中でそれを見せていました。これはみんなが動揺し始めるように、私たちは完全に意図的に行いました。そして人々は本当にそうなりました。

- 羽生結弦がオリンピックで4回転アクセルを跳びたいと言っていたことはまさにこのことが影響していたのかもしれないと仰りたいのですか?

- そうだったのかもしれません。チェンの近くにいる人たち(彼らの名前は言いませんが)が、フリープログラムに4回転ループを入れるように私を説得しようとし始めた時、私は≪絶対にない!≫と言いました。

- なぜですか?

- なぜなら、トレーニングで十分に跳んでいないジャンプをオリンピックのプログラムに入れることはできないからです。跳ぶことはできますが、プログラムの残りの部分が崩れない保証がどこにありますか?羽生が回転不足の4回転アクセルにかなりの力を使い、その後、サルコウで転倒したことで誰が得をしたのか教えてもらえますか?

- 純粋にプロとして、結弦がトレーニングで挑戦しているのを見るのは興味深かったですか?

- いいえ。私は、もし羽生が何か奇跡的な現象でこのジャンプを跳べたと仮定しても、どこか別の場所で乱れる可能性が高いということが分かっていました。問題は、アクセルではなく、滑る必要があり、しかもミスなく滑らなければならない残りのプログラム全てにあるのですから。とてもはっきりとこれをみなさんに証明しているのはジェイソン・ブラウンです。彼は難易度的には完全に初歩のフリープログラムを滑りながら、既に何年間もトップ6に入っています。アクセルに関しては…。もしマリニンが、残りの全ての要素を犠牲にする必要なくこのジャンプを準備することができたら、それは完全に別の話になります。

- 北京で羽生は常に一人であることを強調していました。自分でトレーニングし、自分で決め、自分で自分を演技に導いていると。そしてキスアンドクライでさえ彼は一人で座っていました。私はこれは決定的なミスのように思います。あなたはどう思われますか?

- ≪コーチとアスリート≫のシステムは、何か理由があって考案されたと思っています。私は最近仲間の一人にネイサンがとてもしっかりと私に付いてきている理由を質問されました。

- それで何と答えられたのですか?

- チェンにとって私は、タイトルや実績に関係なく彼に真実を伝える、そういう人間なのです。彼がその真実を気に入るかどうかは重要ではありません。人間は一人の時、自分に嘘をつくことができます。家族であっても親が一人ではなく二人いることはとても大事です。状況により、一人親は子供にとても強く依存し始めます。ですから、あなたが結弦がミスを犯したと仰るのは正しいと思います。

- 実は彼とネイサンの対決が見られなかったことがとても残念なんです。

- もちろん残念です。この二人のスケーターたちの間でだけ本当の決闘が起こり得ました。宇宙的羽生と、とても慎重で現実主義で準備万端のチェンの間で。

- 大会期間中、たとえ一瞬であっても、チェンが克服できないかもしれないと不安になったことはありませんでしたか?

- いいえ、そういうことは全くありませんでした。いくつかのトレーニングの時間に少し緊張しましたが、それほど深刻ではありませんでした。

- トレーニングで何がおかしかったのですか?

- ネイサンが金メダルをかけて戦うための準備があまりできていないように思い始めた時がありました。私は毎回彼にふざけてこう言い始めました。≪からかってるのかい?何かがおかしいことに気が付いたら、私はまず君に言うよ。だからばかなことで私を笑わせないで休んでくれ。≫  フリーの日、彼は朝8時にフリープログラム全てを一度の休憩もなしで最もクリーンに滑ったんですよ?リンクにいたみんなが動揺させられました。前日にも全く同じようにフリーを滑っていました。トレーニングの全ての日程で、彼は事実上何もミスしませんでした。

- 朝の8時にミスなく4回転を跳ぶには選手はいつ起きなければならないのですか?

- 5時には起きていなければなりません。遅くとも。しかし、これは朝のトレーニングのためではありません。午後1時の試合で理想的に滑るためです。

- あなたの生徒さんは団体戦の後、フリープログラムを滑る権利をヴィンセント・ジョウに譲るのを決めたのは彼ではなかったと言っていました。これは団体戦で2度滑る計画があったという意味ですか?

- それは決してありません。私は一番最初からチェンにショートだけ滑って欲しかった。なぜなら私たちは一番最初から個人の金メダルを優先していたからです。本来の試合の前日に、完璧な演技で2度滑ることはとても大変です。私はマルク・コンドラチュクのコーチ(スヴェトラーナ・ソコロフスカヤ -RT)に、2度滑るのは彼女の生徒も手に負えないかもしれないと言ったくらいです。そして正しかったとわかりました。スヴェータはマルクは若いから全部頑張るだろうと私を納得させようとしていましたけれども。

- もう一人のあなたの生徒、マライア・ベルが、アメリカの団体戦に出場しなかったのはなぜですか?彼女は今シーズン全米チャンピオンになったのに。

- 決めたのは私ではありませんでしたが、要求もしていません。団体戦の結果に明らかに大きく貢献するわけではない選手のために戦う意味はあるでしょうか?私の生徒が出場してみんなに勝つと主張することはできませんでした。そしてベル自身にもこう言いました。≪選ばれなかった?それは十分に良くはなかったというだけだよ。≫

- ミックスゾーンで、アスリートは滑らなければならないし、コーチは訓練しなければならないし、ジャッジは点数を出さなければならないということについて、あなたはとても感情的にお話しされていました。行間で何か個人的な事を示唆されていたのですか?

- 私はフィギュアスケートの枠の中で、まあ言ってみれば、それ程プロフェッショナルではない人たちを相手にしなければならないことがとても良くあります。国際スケート連盟の技術委員会にも各国の連盟にもジャッジにもそういう人たちはいます。私が非常に尊敬しているアレクセイ・ミーシンのようなプロの意見は、そういう人たちの意見の連鎖の最後にされることがとても多いのです。これは間違っています。自分の人生全てをフィギュアスケートに捧げた人たちの意見に耳を傾けないわけにはいきません。

それから、私はコーチがジャッジに依存し始めるのはとても危険だということを話しました。ですから、私はいつもジャッジやテクニカルスペシャリストたちと距離を取り、個人的な関係は何も持たないように努力してきました。どんな依存も人間を弱くします。ジャッジについてでも、まあ薬物でも、話していることについてはどうでもいいことです。この沼は、人間が大事なことに集中する力を失うくらい速く、強く引きずり込みます。状況の虜になり、行き止まりという一つの場所にだけたどり着くかもしれません。

- あと、このメダルはあなたをロシアからアメリカへ追いやった人たちを考え直させるかもしれない、という話を聞きました。この話題はまだ辛いものでしょうか?

- 少しそうですね。率直にお話しすると、私はかつて本当に国から追い出されましたから。そして私はロシアのフィギュアスケートは、オリンピックチャンピオンを育てられる私というコーチを失ったのだということを、長年の間証明したかった。ちなみに私は当時なかなか良く働いていました。今持っている経験も豊かな選手層もなかったことはわかっていますし、私自身スケーターとして、セルゲイ・ヴォルコフやウラジーミル・コヴァリョフには遠く及びませんでした。おそらくそれで必要ないということになったのでしょう。

表面上はもちろん誰も私を苦しめませんでした。全てがずっとシンプルでした。家族の面倒をみることが出来ない給料。そして、私が海外で働こうとした時、すぐにそのことで、優しく言えば、小言を言われました。子供たちが成長し、お金は常に足りませんでした。それで出て行きました。しかし、すぐに自分自身に疑問を投げかけました。アメリカでの私の目的は何なのだろうか?例外なくみんなと仕事をして、ただお金を稼ぐことだろうか?それとも、やはり大きな成果を残すことに挑戦することだろうか?何か価値あることをやり遂げたいという思いは、何年間も、仕事における大きな原動力でした。

- チェンとあなたの今シーズンは終わりですか?それとも世界選手権の準備をされるのですか?

- 私は正直に言うと、ネイサンにもう引退して大学の勉強をするように勧めたいくらいです。何のために滑り続けるのですか?もう一つのメダル、もう一つの世界王者のタイトルを獲得するためですか?それは些細な事です。

- そうですね。しかし、もしあなたの生徒がプレゼントを持ってやって来て、≪コーチ、僕はもう滑りません≫と言ったら残念ではないですか?

- いいえ。もしチェンがそう決めたのならそれが正しいです。

- あなたの所には既に彼の代わりがいますか?

- いいえ。それに、私はそれを求めていません。そもそもコーチの仕事を少し減らしたいです。

- 砂浜に寝転んで退屈過ぎて死んだも同然になるためですか?

- なぜですか?興味があることや関心事はたくさんありますよ。それに私が年を取っているということを忘れないで下さい。もちろんアドバイスはするつもりですが、本格的なコーチの仕事は…やりたくありません。非常にたくさんのものを抱え続ける準備はできていません。へとへとになって途中で死んでしまわないか心配しています。仕事を中途半端にすることはできませんが、良い仕事をする価値を私はよく分かっています。ただ力が十分にない…。


なんだか元気がなくなって終わっていますね💦

相当お疲れだったのかな?

ラファは64歳?ミーシン先生たちと比べたらまだまだ若いですけど、そろそろゆっくりしたい頃なのかもしれないですね。