「≪仮面舞踏会≫を滑るために口ひげを伸ばすことはない」 ミハイル・コリャダは、昨シーズンのショック、モチベーション、将来の計画について話した
2022年6月14日
昨シーズンの始めは、2018年のオリンピック団体戦銀メダリストであり、世界選手権、ヨーロッパ選手権のメダリストであるミハイル・コリャダにとって順調なものでした。アレクセイ・ミーシンの生徒である彼は、グランプリシリーズを首尾よくスタートし、ファイナルに進出しました。この大会は結果的に残念ながら開催されませんでした。しかし、ロシア選手権の後、彼はケガのためにヨーロッパ選手権を欠場しなければならず、COVIDが原因で北京オリンピックに出場することができませんでした。ですから、その後の練習と、ロシア選手の出場が許可されなかった世界選手権と同じ期間に開催されたチャンネル1カップへの出場は、彼にとってとても大事なことでした。
昨シーズンの様子、主要大会に出場できなかった理由、将来の計画、ショーへの参加、アレクセイ・ミーシンとの協力、そしてファンたちのサポートについて、ミハイル・コリャダがインタビューで話しました。
- 昨シーズンのショックはあなたにとってどんなものになった?
- 難しい質問ですね。グランプリファイナルに行けない、世界選手権に参加できないと公表される度に、もちろん残念でした。なぜなら、選手たちはみんな準備して、コンディションをピークに持っていき、シーズンの主要大会で自分の最大限を見せることを目指していますから。そして、もし、どうにもならない理由で今シーズンのような状況が起こったら、代替手段を探さなければなりません。ちなみに、チャンネル1カップについては開催されてとても素晴らしいと思います。僕は12月から出場できないままということになってしまいました。そして、かなり長い休みの後、観客の皆さんの前で演じることがどんなものだったかを感じるために、僕にはチャンネル1カップに行くことがとても大事なことでした。
そして、ショックについてですが、僕は練習でケガをしてヨーロッパ選手権に行けなかったし、COVIDのせいでオリンピックを欠場しました。もちろん残念です。でも他方から見れば、人生はこれで終わりではありません。何れにしても先に進まなければなりません。
- オリンピックに出場するチャンスはあったと思う?
- COVIDがなかったなら、全く違う状況だったことでしょう。オリンピックの終わりまで、僕は一度も2回の陰性反応が出ませんでした。でも、何回この検査を受けたか!病気が治り、症状がなくなり、匂いがちょっとずつ感じられるようになり始め、一見終わったようでしたが、検査を受けるとまた陽性が出る。再検査を受けると陰性が出る。アレクセイ・ニコラエヴィチに電話をすると、彼は2回の陰性結果が必要だと言う。検査を受けに行くとまた陽性が出る。
約40日間、陽性反応が出ていました。様々な研究所、様々な設備で検査を受けましたけど。それに…。
僕が北京に行っていたとしても、僕がオリンピックに参加できる保証はなかったでしょう。中国にはより正確で高感度の設備があることがわかりましたから、検査はきっと陽性だったでしょう。それに、もし僕が隔離されていたとしたら、もっとひどくなっていたでしょう。その場合、チャンネル1カップにさえ出場できなかったかもしれません。
病気の後、僕はほぼ1カ月滑っていませんでした。体力の衰えが長い間感じられました。チャンネル1カップに向けてなかなかスタートが切れませんでした。シーズン最初の試合より大変だったくらいです。≪物理≫的なことがとても強く損なわれました。サランスクではリンクに出て、まるで全てゼロから始めるみたいでした。しかし、北京では、4年に1度の大事な大会に出場する必要がありました。そして、どんな場合でも、病気の後に短期間で準備をして最大限の力で滑るのは非現実的だと僕はわかっていました。
僕はオリンピックを見ていません。テレビの近くに座っていられませんでした。彼らはあそこにいて僕はここにいるのがわかるのは辛かった。もちろん僕が状況を変えられないことはわかっていましたが、それでも…。
- COVIDの後、正常な状態になったらすぐに、あなたは練習を続けていたわね。
- 僕にとってシーズンの終わりに出場することが大事でしたから。もちろん、まだロシア人の出場が許可されないということを知りませんでしたから、僕たちは世界選手権に向けて準備していました。僕は追いつく必要があることを理解していました。目標を定めそれに向かっていました。目標や計画があり、試合の具体的な日程が決まっていると、ずっと簡単に早く練習に身が入るものです。
8月に何かを滑らなければならないと抽象的に言われていると仮定しましょう。そういう場合、結果的に何も上手くいきません。でも、例えば8月15日にテストスケートがあると正確に知っている時は、僕は準備万端でしょう。
何でもそうです。会計士たちが決められた期限までに四半期の報告書を提出するのも同じです。これは例で言っただけですが、アスリートたちは、コンディションをピークに持っていくために、自分を調整し、力を配分するために、いつ試合があるのかをなおさら理解する必要があります。他の人のことはわかりませんが、僕は個人的に、全て事前に計画されている方が準備するのが簡単です。
- 今後のキャリアについて心配したことはあった?
- 健康や願望やモチベーションがあるうちは滑らなければならないと思いました。なぜなら僕はコーチはいつでもできますし、今持っているものを使わなければなりませんから。僕にはポテンシャルがあり、僕はそれを発揮したい。僕は自分の限界に達していないと確信しています。
ただ、年々僕は試合やそれに向けての準備や練習を違ったやり方で見るようになりました。15歳だった時とは違います。そして、コーチたちが僕をとても支えてくれています。連盟も。アレクサンドル・ゲオルギエヴィチ・ゴルシコフとアレクサンドル・イリイチ・コーガンは、電話で「全て上手くいくよ。私たちは君を信じているし、もし問題があればすぐに電話してくれ」と言ってくれました。
唯一、少し気になっていたのは、アレクセイ・ニコラエヴィチがインタビューで毎回繰り返していた、僕たちのプロジェクトが2年計画だという彼のフレーズでした。僕は彼の言葉を文字通りに受け取り過ぎていたのかもしれません。シーズンの終わりに、僕たちは全てのことを話し合いました。そして、僕はこの≪ポイント≫を頭から消しました。
- ミーシン夫妻と話した時、嬉しかった?
- もちろんです。何を悲しむんですか。これは皆にとって良いことでしょう(笑)
- チャンネル1カップではショートとフリーの始めにあなたはトリプルルッツを跳んだけど、これはきっと4回転を入れたヴァリエーションを考えているということよね?
- はい。でも≪クロウ≫はもう滑りません。4回転ルッツは計画にある、とは言えます。
- 来シーズン(今のところ国際大会はない)は実験するチャンスがあると考えている?
- 全てアレクセイ・ニコラエヴィチへの質問です。彼は僕たちが何をするか、何をしないかを決めています。でも、僕は新シーズンには新しいことを試せるということに賛成です。そして、できるということにではなく、必要だということに。
- 新しいことというテーマの続きで、普通、自分の人生を変えたがっている女性たちが新しいヘアスタイルにするけど、あなたが髪の色を変えた理由も同じ?
- いいえ。深読みしすぎですよ。もっと単純です。やってみたかったからやってみた。何の意味もありません。ただ休暇にちょっと髪を染めただけですが、COVIDにかかった時、自分の髪の色を選べ、という広告をネットで見たのがきっかけです。僕はアッシュブロンドを選びました。見たけど悪くないと思います。それに、僕たちが休暇に行った時、今じゃないならいつやるのと思って決めたんです。気に入っていて、結果に満足しています。
- 新プログラムのための新しいイメージなのかと思ったわ。
- 僕はそういうことは絶対しません。≪仮面舞踏会≫を滑るために口ひげを伸ばすことはないです(笑)
- 新プログラムの練習は始めているの?両プログラム共変えたい?それとも≪くるみ割り人形≫は残すの?
- アレクセイ・ニコラエヴィチは考えています。でも、彼の傾向を考えると、新しいプログラムを作るかもしれません。フリーはイリヤ・アベルブフと作り始めています。曲は気に入っています。僕にとって、イメージも、創造の翼を広げられるかもしれない面白くて音楽的な伴奏も大事なものです。
基本的に、イリヤと仕事をするのはとても面白いです。僕は既に彼のアプローチが気に入っているとお話ししました。イリヤは準備されたものを提案しませんし、お決まりの繰り返しを要求しませんが、僕ができることを出発点にします。僕たちはまるで新年のヨールカ(ツリー)におもちゃを吊るしているみたいです。僕自身が何かを提案できたら、彼は「いいね、残そう」と言ってくれます。これはそういう共同の創造プロセスです。
でも、アイデアの面でイリヤは天才的な人です。彼は一見小さなことに思えても、プログラムの印象的な特徴になるディテールを思いつくことができます。衣装でも。≪くるみ割り人形≫で兵隊服の肩章を一つにしたみたいに。彼は、反響を呼ぶかもしれないリンクの上で語る物語の続きを考えることが出来ます。これはもちろん才能と経験によるものです。イリヤは既にそれ程長い間≪アイス・エイジ≫のためにプログラムを作り出しています。
- また実験についてだけど、イリア・マリニンの4回転アクセルについてどう思う?女子の4回転がそうだったみたいに、このジャンプは他のスケーターたちも跳び始めると言える?
- 時が経てばわかります。これはアスリートのデータだけではわかりません。多くの要因が合致しなければなりません。そして、そもそもトリプルアクセルが高く、テクニカルで、回転しきっていなければなりません。見てみましょう。
- あなたは多くのショーに出ているけど、ショーは試合の実戦経験の不足を部分的ではあっても補えている?
- 今シーズン、実際僕にはあまり試合がありませんでしたが、ショーへの参加は観客の皆さんの前で演技する良いチャンスです。シーズンが終わった後、エテリ・ゲオルギエヴナ・トゥトベリーゼのショーに6回、ジェーニャ・プルシェンコのショーに3回、イリヤ・アベルブフのショーに1回、後、≪フィギュアスケートラバーズ≫に1回参加しました。アレクセイ・ニコラエヴィチはこれは役に立つだろうと言いました。それに僕自身もショーに出場するのに反対したことはありません。
もちろん、ショーは試合ではありません。でも、ショーはアドレナリンを感じさせてくれます。試合ほど強くはありませんが、それでもやはり演じている時に、観客の皆さんとエネルギーの交換ができます。それに、ショーは雰囲気自体が違います。より複雑だと言ってもいいかもしれません。なぜなら、観客の皆さんが直接氷の側に座り、フェンスがなく、照明が落とされた中、様々な大きさのリンクで演じなければなりませんから…。これには実践経験で慣れないといけません。そして、もし新シーズン、試合のリンクの大きさが変わったら、それに対しても準備しなければなりません。つまり、ショーは多くの様々なヴァリエーションを試させてくれます。そして、僕にとってこれは一種の練習です。僕はショーをある種のトレーニングプロセスだと考えています。
- ショーで一番記憶に残っていることは何?
- 観客の皆さんのものすごいサポートです。どの街でも。ミンスクからタシケントまで。ホールは満員。人々は出迎え、サインを求め、スタンディングオベーションをしてくれました!そして、シーズンの終わりで皆もう疲れているように見えましたが、このものすごいエネルギーはそれ程たくさんの力を与えてくれました。でも、リンクに出て観客の皆さんに喜びを与えるのは毎回素晴らしいことです!
- あなたたちは今キスロヴォツクの合宿だけど、この後はソチ?
- はい。6月17日からソチに行きます。アレクセイ・ニコラエヴィチはサンクトペテルブルクに長い間いるのが好きじゃないんです。
- キスロヴォツクの合宿で、スケーティングの常任コーチであるキリル・アリョーシンが、あなたたちのグループで初めて仕事を始めたけど、あなたはいつもあなたにとってこれは大事なことだと言っていたわね。
- 僕は実際スケーティングを学ぶのが面白いんです。専門家たちとならなおさらです。実際は、今キスロヴォツクで僕は新しいスケート靴で滑っていたので、まだ何かそういうことをするのが難しかったのですが。
ショーの前、全体練習の時、僕はいつもアイスダンサーたち、ニキータ(カツァラポフ)たちから何かを盗み見ようとしています。ワーニャ・ブキンは僕にニュアンスみたいなものを教えてくれました。あらゆる所から何かを得ようとしています。そして、僕たちの所にスケーティングの常任の専門家、キリル・アリョーシンが現れたことは、皆のためになるでしょう。本当に。
- 新シーズンへの気持ちはどんなもの?
- 好戦的な気持ちです。僕たちには、基本的にロシア国内の試合が行われたパンデミックシーズンでの経験が既にありますし、僕は、ミンスクやハーグでのいくつかの国際大会にだけ出場し、シーズンの終わりに世界選手権に出場したことを覚えています。
来シーズン、国際大会への参加はまだ問題視されています。でも、ロシアの連盟は既にロシアのグランプリシリーズを行うことを発表しています。よくぞやってくれました。僕はシリーズに割り当てがあるのが嬉しいです。なぜなら、トップの皆が同じ試合で戦い、他の試合に誰もいないのは面白くないからです。試合があるならもう十分です!
- ありがとう、ミーシャ。成功を祈ってるわ!
オリガ・エルモーリナ、タチアナ・フレイド
アベさんもマリニン君も同じ「イリヤ」だけどマリニン君はなんとなく「イリア」と書かなければならない気がしてムズムズします。
「ディマ」と「ジーマ」みたいな葛藤が。