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マリニンのポケットには5回転がある

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"マリニンのポケットには5回転がある":ロシアの奇跡のスケーターのエージェントへのインタビュー

2023年3月26日

ヴラド・ジュコフ

 

ロシア系アメリカ人、イリア・マリニンが世界選手権で銅メダルを獲得しました。彼のエージェントであるアリ・ザカリアンは、リア・ノーヴァスチ・スポーツのインタビューで、マリニンの唯一無二のアクセルを過小評価したジャッジを批判し、埼玉で行われた大会で起こったその他の不公平なことについて話しました。

 

"マリニンは当惑した"

- 男子の世界選手権の結果についてどう思われますか?私の見たところでは十分議論の余地があるものだったと思いますが。

- まずは、イリアの非現実的な演技を祝福したいです。私は彼が見せたことをとても誇りに思います。これは別の銀河であり、私にとってこれは成層圏へのジャンプみたいなものです。そしてフィギュアスケートファンはこれを評価していると思います。結果について言えば、私は4回転アクセルに12.86点を与えたジャッジにひどく驚かされ、"感謝"しています。美しいトリプルアクセルでもほぼ同じ点数を出すことができたでしょう。ですから、私は彼の4回転アクセルをエレガントに評価したジャッジたちに"ありがとう"と言います。世界選手権史上初のことだったと思いますが。

- つまり、率直言うとイリアは不当に評価されたと?

- それは彼の演技を評価した人たちの良心に任せましょう。彼はよくやりましたし、彼は天才的で優れたアスリートだと思います。そして、私は彼が回転を減らさないことをただ願っています。大事なのは、彼の業績によってフィギュアスケートが大きく前進したということを彼が理解することです。

- 世界選手権でのイリアに関して私たちが話すのは基本的に4回転ジャンプのことですが、宇野昌磨のフリーでの4回転ジャンプは彼より1本少なかったですね。

- 昌磨のそのうちの1本には大きなミスがありました。

- ですが、ISUがプログラムで見たいのはバランスだと私たちは何度も聞いています。イリアがまだそれほど構成点が高くないことを考えると、彼にはまだ点数を伸ばす余地があるということになりますか?

- もちろんあります。ただ、彼に今大事なのは留まらないことです。なぜなら、世界選手権のこのような結果に彼は当惑したと言えますから。彼はまるで頭から冷水をかけられたみたいなものです。

 

"技術屋より滑りの達人が優位なのは不公平"

- イリアの状況は、多くの人たちにオリンピックでのアレクサンドラ・トゥルソワの状況を思い出させました。彼女は技術に最大限に専念しようと努力しましたが、結果としてリスクは報われませんでした。

- はい、おそらく類似性があります。4回転ジャンプは大量に、とても多くのエネルギーを奪いますし、これはもちろん評価されるべきです。私は元スケーターとして、4回転ジャンプを跳ぶとき、どんなに注意力を高めなければならないかを知っています。このようなエレメンツに挑むスケーターの中には、跳んだあとに崩れて安全策を取り始める人たちもいます。デニス・ヴァシリエフスを例に挙げると、彼は世界選手権のフリーで素晴らしい滑りを見せましたが、彼は4回転サルコウを跳んだために、普段の彼なら目を閉じていても行えるいくつかのエレメンツに問題が起こりました。おそらく、まさに4回転に集中したことが響いたのでしょう。

- その理由で、ジェイソン・ブラウンは結局4回転への挑戦を断念したのだと思います。

- おそらくそうでしょう。もし彼が美しく滑り良い点をもらえるなら、何のために4回転を跳ぶ必要があるのでしょうか?

- では、現在のジャッジシステムについて議論しましょう。一方で、ISUはバランスが取れたプログラムを望んでいますが、同時に滑りの達人たちは技術屋よりある程度優位性を持っています。

- そのことを私は不公平だと思っています。フィギュアスケートがスポーツなのか、ショーなのか、その中間のようなものなのか、はっきりさせる時期に来ているように思います。そうすれば、観客や内部にいる人たちが起こっていることをより理解する助けになります。世界選手権の話に戻りますが、私はとてもがっかりしました。イリアが勝たなかったからではありません。宇野昌磨やチャ・ジュンファンがメダルを獲得したことが不相応だとは言いたくありません。彼らはよくやりました。素晴らしい演技でした。私は4回転アクセルのことだけ心配しています。非常に難しく危険なエレメンツに挑んでも得るものが…。スケーターの誰かに聞いてみてください。彼らにとって4回転アクセルは奇跡みたいなものです。私が今言えるのは、4回転アクセルを跳ぶことができる次の選手が現れるのは5~10年は先であり、それより早く現れる見込みはほとんどないということです。

- そして、多くの人たちが4回転アクセルのリスクは無駄だと考えています。たった12.5点ですから。あなた自身、良い3回転でほぼ同じ点がもらえるとおっしゃいましたね。

- そして、これも不公平だとわたしは思います。多くの優れたスケーターやコーチと話しましたが、彼らは皆4回転アクセルには20点は出すべきだと言っています。これは進化で、人間の体の可能性の限界を広げています。カート・ブラウニングが初めて4回転トウループを跳んだ時、彼には最大限高い点数が与えられました。彼は最初にこのエレメンツを行った人として人類の記憶に残っています。そして、もし今私たちが自分たちの手でこのスポーツを前進させようとしている人を押しつぶしいているのであれば、それは何のためでしょうか?今、私たちはあたかもリスクを冒す必要はなく、安定したエレメンツの良い一連の演技を行い、美しいスケートを学ばなければならないと言っているかのようです。これはもちろん全て正しいことですが、そうやって私たちは成長を促進できていません。もし、フィギュアスケートで皆がこのモデルに従えば、進歩は止まるでしょう。

 

"悲しい結論"

- ISUは急いで進歩することを望んでいないという印象です。彼らは未だに5回転ジャンプの点数を決めていませんから。今、5回転ジャンプは文字通り0点です。つまり、5回転を学ぶことにした熱心な選手がいても、実際には評価されないという事実に直面します。

- ところで、私たちは文字通り今日イリアと5回転ジャンプについて話して、彼のポケットには既に5回転があると言っていました。彼は5回転が跳べるけど、今のシステムがどんなものかを考えると、試合で跳ぶことはないでしょう。意味がありません。しかし、練習では彼は跳んでいて、もし誰か5回転ジャンプがどんなものか見に来たかったら、彼は皆を自分のところへ招待しますよ。

- 本当に皆を呼ぶのですか?

- はい。私たちは日にちと時間を指定します。皆さんいらして下さい。お金は誰からも取りません。イリアはただどんなに進歩しているのかを人々に見て欲しいのです。

- 5回転はどんなものですか?秘密でなければ。

- イリアはいくつか持っています。詳細は発表したくありませんが、彼はいくつかの種類の5回転を跳べます。今は4回転アクセルや5回転といったエレメンツがサーカスに宙返りとかを見に行くようなものであることが残念です。娯楽ですね…。ですから、今のところイリアの5回転は観客へのプレゼントであり、それ以上のものではありません。

- イリア自身は結果をどう受け止めていますか?

- 彼は全く落ち着いています。4回転アクセルの点数には少し驚いていましたが、彼は大丈夫です。イリアは本物のアスリートで、私は最高のスターだと思っています。彼は完全に別の銀河から来ています。そしてなぜああいう評価なのか。まあいいでしょう。4回転アクセルは12~13点だと理解することにします。そしてこれからの世代の選手たちは、今、変化をもたらせる新しいエレメンツに挑んでも意味がないことを知っています。なぜならこの進化の価値は12点ですから。やる意味がありませんし、安定した構成で演技し、良い点数をもらった方が良い。

- イリアにはそういった考えはなかったのですか?例えば、試合で4回転アクセルを辞めて、構成点の評価に合わせるとか。

- そういった気持ちもあったかもしれません。彼はここでもジャーナリストたちに観客のためにアクセルを跳んだと言っていました。観客たちはこのジャンプを待っていましたし、彼もそれを見せました。イリアは多くの観客が彼と彼のアクセルを見に来ていたことをわかっていました。彼には自主的にこの先の試合で行う技術内容について決める権利がありますし、そのことで彼の邪魔をしたくはありません。彼は構成点を上げられますし、最高のスケーターになれます。保証しますが、彼はできます。ただ今私たちはこの先どうするか十分に考える必要があります。イリアにはこれからショーや世界国別対抗戦があります。考えます。しかし、今、4回転アクセルはプロの目で見て、あまり重要ではないし、彼らはそれほど興味もないということがはっきりとわかりました。もちろん悲しい結論です。