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ステファン・ランビエール:≪スケーターたちにもっと自由を≫

しばらく更新する気合が入らず止まってましたが久しぶりにUPします!

ウクライナのサイトの記事です。

sport.ua


2022年8月16日

ステファン・ランビエール:≪スケーターたちにもっと自由を≫

新ルール、自分の生徒たち、若いウクライナ人への援助について

 

Sport.uaの記者は有名なスイス人コーチとシャンペリーにある彼の学校で話をしました。

昨シーズンはステファン・ランビエールと彼の生徒たちにとって、とても成功したシーズンでした。ラトビアのデニス・ヴァシリエフスはヨーロッパ選手権で初めてメダル(銅)を獲得し、日本人の宇野昌磨は2022年のオリンピック銅メダリストになり、その後世界選手権で勝ちました。

彼の学校、Skating school of Switzerlandがあるシャンペリーで行った私たちの記者とのインタビューで、スイス人コーチは、メダルや成功に繋がったことだけではなく、生徒たちと過ごした全ての思い出と瞬間が、彼にとってとても価値のあるものだと話しました。

≪生徒たちみんなに対する私の最終目標は、いつの日か彼らが自主的になってくれることです。≫

と、ランビエールは付け加えました。

彼の意見によると、シャンペリーで既に3年トレーニングしている宇野昌磨と彼らはちょうど正しい方向に動いているところだということです。

≪昌磨はますます自主的になっています。彼は常に自分の個性を伸ばすことができていて、彼は自分が好きなもの、欲しいもの、必要なものを知っています。彼は自分自身をとても良く理解していて、これはもちろん技術面でも芸術面でも彼を助けています。≫

と、ステファンは話しました。

2022年のモンペリエの世界選手権での宇野の勝利は、彼のコーチにとってとても輝かしい瞬間と思い出になりました。金メダルという事実だけではなく、滑った昌磨の自由と喜び。それを彼は観客にも伝えることができました。

23歳のヴァシリエフスとランビエールは既に6年組んでいますが、彼の確かな成長と発達についても話しています。

≪私は彼がとても大人になったと感じています。彼は大きな野心と決意を持ったとても強い人で、やること全てにおいてとても意識的で念入りであり、私は彼のそういう特徴が好きです。同時に、私は依然として彼を指導し、助けなければなりません。こういう完璧主義はよく多くの疑念を伴うからです。≫

と、ステファンは打ち明けました。

デニス自身も次のオリンピックサイクルから得るものを待っていて、2026年のミラノオリンピックまで現役を続けるつもりだと私たちに話しています。

≪僕は実際、とても良く練習したこの夏に満足しています。僕は、ジャンプもスケートもできることを主に自分自身に証明したい。僕は演技の一体性、その最高のレスポンス、瞬間を求めています。例えば、オリンピックで楽しんで滑っているとき、とても心地良い気分でそこにいます。これから新しいオリンピックサイクルに入りますが、僕はこれからの4年間、この感情を満喫したいのです。なぜならその後は僕にはそんなに多くのチャンスがなくなりますから。おそらく、このスポーツでは長い間≪生きて≫いられません。僕は今既に事実上自分のことをフィギュアスケート界のおじいちゃんの一人と呼べます。僕が一緒にキャリアを始めたほとんどの人たちが既に引退しています。≫

と、ラトビア人のスケーターは打ち明けました。

彼は、プログラムの演技中、点数のことを考えず、音楽と演技に完全に身を任せ、毎秒を楽しむ特別な状態に好きな時に入る方法を学びたいということです。

≪僕は自分がしていることから自分の喜びを求めています。そうでなければそもそもする意味がありません。滑れば滑るほど自分自身のことや≪ゾーンに入る≫という概念がわかってきます。僕にとって素晴らしいプログラムの演技は、その中で完全に生き、それを感じ、その結果、演技後やったことを覚えていないかもしれないものです。そして、この自由、この≪ゾーン≫、これは好きな時にオンにすることを僕がとても強く学びたいと思っているものです。そして、僕は解き放っているのに同時に完全に存在するこの瞬間に到達することを学ぶ方法を会得したいのです。≫

と、ヴァシリエフスは話しました。

もちろん、この夏、国際スケート連盟(ISU)の総会で決められたフィギュアスケートのルールのお決まりの変更について、私たちはランビエールの考えを聞かないわけにはいきませんでした。

主な新ルールの一つは、スケーターの年齢制限の引き上げであったことを思い出してください。選手のキャリアを延ばし、同時に彼らの肉体的、精神的健康に配慮するために、シニアの大会に参加する最低年齢を引き上げることになりました。これは段階的に行われます。今シーズンは以前と同様の制限で、7月1日までに15歳になったスケーターがシニアの大会に参加できます。1年後、制限は16歳まで引き上げられ、2024/2025シーズンから年齢制限は17歳になります。さらに、ファイブコンポーネンツ(スケート技術、要素のつなぎ、パフォーマンス、曲の解釈、振り付け)で評価するプログラムの採点システムが変更され、3項目が残されました。パフォーマンスと曲の解釈が≪プレゼンテーション≫に統合され、要素のつなぎは廃止されました。

まあ、ステファンはこの点に関して個々の部分ではなくシステム全体を変える必要があるという自分の意見を持っています。

≪私は変更を受け入れ、ルールに従ってプレーしますが、もちろん、もし十分にこのことについて考えたなら、私は多くのことを別の方法で行うでしょう。私は全てを変えると思います。このシステムは悪く、彼らは細かい欠点のようなものを直そうとしていますが、システムが不出来ならば、小さな変更でそれが良くなることはなく、システム全体を変えなければならないと思っています。≫

と、コーチの仕事を始めるまで、自分自身がスケーターとして成功し、タイトルを持っているランビエールは確信しています。

彼は選手たちが氷上で自分自身やオリジナリティーをもっと自由に表現することを望んでいますが、現行採点システムはそれを許していません。

≪私たちはスケーターたちがより自由であることを奨励すべきですが、システムがそれを許しておらず、結果としてこの特殊なルール全てにより彼らの自由はどんどん減っています。そして、問題はみんなが同じことをしているのを見て、誰にもオリジナリティーを見せるチャンスがないということです。私たちはオリジナリティーや芸術性などについて話しますが、それをする自由を与えていないのにルールをより厳しくしているだけです。私にとって意味を持たないことが多過ぎます。例えば、難しそうに見えるけれども同時に簡単に難なく実行できなければならない。これはどう評価するのでしょうか?私には意味がないという点においてシステム全体が間違っているように思えます。私はこのスポーツの芸術性や創造的な面が好きですし、スケーターたちが自分らしくいられる自由がもっと与えられて欲しいと心から願っています。≫

と、ステファンは打ち明けました。

ちなみに、彼自身素晴らしいコンディションを維持していて、未だに4回転ジャンプを跳ぶことができ、夏に参加した日本のいくつかのショーで披露しています。ランビエールは、再びスケーターとしてリンクに出ることができ、自分の2つの新プログラムを見せることができてとても幸せだったと打ち明けました。彼は、常に他人にやり方を教えているから、コンディションを維持し、難しいエレメンツを行い続けることはそんなに難しくないと笑顔で付け加えました。

今、ウクライナのスケーター、11歳のリュボーフィ・ジョロボワも、シャンペリーのランビエールの学校でトレーニングしています。彼女は家族と一緒に戦争から逃れ、3月にスイスにやって来ました。ステファンと彼のチームは喜んで若い選手を受け入れ、彼女が快適に感じられ、完璧にトレーニングし、再び夢見ることができるようにとても努力しています。彼は、この交流と協力がどのように起こったのか、そして、ウクライナの家族を助けることが彼にとって大事な理由を思い出しました。

≪私たちはジョロボワの一家の友達から支援のお願いのメールをもらいました。そして、もちろん私はとても状況について心配していました。リュビーナについてだけではなく、この大変な状況に置かれている全ての人たちのことについて。このことで、私ができることは少ないですが、もちろん、とても多くの人の生活が壊されていることを知った時、援助のためにできる全てのことをしなければならないと感じました。そして、このリュボーフィの家族の移住についての問合せを受け、彼女がトレーニングし、夢を見続け、彼女が大好きなことを続けられるように、彼らがここで安全に暮らすことは、彼らにとって良い環境になるだろうと思いました。私にとって彼女と彼女の家族を助けることは大事なことでした。私はもっと多くのことをしてあげたいのですが、私には限界があります。多くの人たちがもっとたくさん助けてくれること、そして、この状況が早く終わり、私たちが再び平和を取り戻せることを願っています。≫

と、ランビエールは打ち明けました。

もちろん、新しい場所や言葉に適応するには困難を伴いますが、ステファンはこれを理解していて、戦争がまだ続いている自分たちの家から遠く離れたリューバと彼女の家族にとって、この期間ができるだけ簡単になるように自分のチームのみんなと一緒に努力しています。

≪クリストファー(学校の校長 – 編集者注釈)と私たちは、家族に全てを十分に提供できるように最大限努力しましたし、町も住居と学校のことで彼らを支援しました。リューバはもちろん大変で、新しい環境、新しい言葉、新しい人々、新しい家や文化、全ての新しいことに適応する必要があります。彼女のご両親も同じです。私はよく旅行をするので、家から遠く離れて暮らすことがどんなものか知っています。ある時、ひどく家が恋しくなります。特に、やむを得ず去ることになり、他に選択肢がなかったのならより大変です。ここ、シャンペリーでは、私たちは彼らが自分の家のように感じてくれるように努力しています。そして、可能な限り上手くいって欲しいです。全てを捨てて前に進む、それが家族にとって非常に大変なことなのはわかっています。私はこの行動に感嘆していて、彼らをできる限りサポートしたいと思っています。≫

と、彼は話しています。

 

マリーナ・ナスチェヴィッチ シャンペリー